ビニル被覆電線・ケーブルの取扱い
ビニル被覆材は、低温ではもろく割れやすくなるため、一般に電線・ケーブルに過激な衝撃を与えたり、 床の上にたたきつけるようなことはさしひかえ、特に寒冷地でビニル被覆電線・ケーブルを取り扱うときは 注意してください。
許容張力
ケーブルに過大な張力を加えると、導体が伸びたり、断線する恐れがあるため、次の値を超えないように 注意してください。
- 銅導体ケーブルの許容張力(Kg) = 7 (Kg/mm2) X 線心数(本)X 導体断面積(mm2)
- 銅導体ケーブルの許容張力(N) =68.6 (N) X 線心数(本)X 導体断面積(mm2)
許容曲げ半径
ゴム、プラスチック電線・ケーブルは、可とう性はあっても過度な曲げが加わると電気的性能などを低下さ せてしまうので、次の値以下に曲げないように注意してください。
(注)移動用においてリール巻取式・カーテン式仕様などの常に一定の場所でくりかしえ曲げられるものは、この数値を 適用できない。ケーブル布設時における屈曲半径は、側圧を考慮して決定する。
(参考文献:一般社団法人 日本竜線工業会 電線要覧)
使用区分
- 放電灯、ラジオ、テレビ、扇風機、電気バリカンなどに電気を熱として使用しない小型機械器具に使用する場合
- 電気毛布、電気足湿器、電気温水器など高温部が露出していないもので、かつ、これに電線が触れるおそれがない構造の加熱装置(加熱装置と電線との接続部の温度が80℃以下であって、かつ、加熱装置外面の温度が100℃を超えるおそれがないもの)に使用する場合
- 電線が熱的影響をうけない構造とした白熱燈スタンド
【参考文献:一般社団法人 日本電気協会 JEAC 8001-2011 内線規程】
各種シース構造と耐環境特性
ポリエチレン又はビニルは最近、難燃性のものが開発されているが、ここでは、一般的な材料として考える。
◎:きわめて良好 〇:良好
△:使用法を誤ると問題がある
×:適さない /:防食層の材料による
【参考文献: 一般社団法人 日本電線工業会 技資第177号「通信ケーブルの選び方と使用法」】
各種シース材料の耐薬品性及び耐油性
◎:ほとんど変化なし 〇:わずかに影轡される
△:ある程度おかされるので特別な場合を除き実用できない
× :かなりおかされるので実用不可 ×× :甚だしくおかされる
電線・ケーブルの耐用年数
一般の電線・ケーブルの設計上の耐用年数は、その絶縁体に対する熱的·電気的ストレスの面か ら20~30年を基準として考えてありますが、使用状態における耐用年数は、その布設環境や使用状況により大きく変化します。
耐用年数を短くする要因としては、次のようなことが考えられ、使用される環境や状況によっては、それらの組み合わせで更に劣化が促進されることが考えられます。
- 電気的要因(過電流・過電圧等)
- 電線・ケーブルの内部への浸水
- 機械的要因(衝撃、圧縮、屈曲、捻回、引張、振動 等)
- 熱的要因(低温、高温による物性低下)
- 化学的要因(油、薬品による物性低下や化学トリーによる電気的劣化)
- 紫外線・オゾンや塩分付煽(物性低下)
- 鼠や白蟻による食害
- かび等の微生物による劣化
- 施行不良(端末及び接続処理、接地処理、外傷 等)
電線・ケーブルが正常な状況で使用された場合の耐用年数の目安は次のとおりです。
電線・ケーブルの耐用年数の目安
(注) 移動用キャブタイヤケーブル等は、使用状況により耐用年数は大きく異なり、一概に決められません。
その使用状況に見合った耐用年数を考えて更新していく必要があります。
メタル通信ケーブルの耐用年数の目安
【参考文献: 一般社団法人 日本電線工業会 技資第107号「電線・ケーブルの耐用年数について」】
ドラムの取扱い
可動部用ケーブルの配線
ケーブルの早期断線などのトラブルを避けるため、配線時は、次の事項について注意してください。
ケーブルベア配線
(1)ケーブルベアの曲げ半径
ケーブルベアの曲げ半径Rは、ケーブル外径の10倍以上を確保してください。
(2)配線時のケーブルのよじれ防止
ケーブルベア内の配線は、ケーブルによじれが入らないようにしてください。
ケーブルを水平に放置する、つり下げる等の処置をして、よじれを取り除いてください。
(3)ケーブルベア内での過張力と固定の防止
ケーブルに張力を加えたまま配線すると、ケーブルベアの内壁との摩擦でケーブルのシースが削られます。
また、ケーブルベア内でケーブルを固定や結束すると、ケーブルが持つ曲げ応力の吸収や分散作用が阻害され、
固定部にストレスが集中します。従って、配線はケーブルに張力が加わっていないことを確認し、固定はケーブルベアの可動しない両端末のみとしてください。注)
ただし、ケーブルを締め付けるような強固な固定はしないでください。
注)水平設置したとき、ケーブルベアにたるみが生じるようなロングスパンの場合は、ガイドレールと支持ローラーの設置を推奨します。
※一定時間稼動させた後で、ケーブルの位置をチェックし、必要に応じ、調整してください。
(4)ケーブルの干渉防止と混配線時の注意
- ケーブル同士の干渉を避けるため、ケーブルベア内にケーブルを水平に並べた時、十分な間隔が確保できるような横幅のケーブルベアを選定してください。仕切板を設けると干渉防止に効果的ですが、ケーブルと仕切板の間隔は2mm以上確保してください。また、仕切板なしのケーブルの多段積みはしないでください。
- ケーブルの占積率は、30%以下にして下さい。
- 外径が大きく異なるケーブル同士を混配線すると、細いケーブルが太いケーブルに押さえつけられることがあります。この場合は、ケーブルベア内に十分な間隔がある場合でも、仕切板を取り付け、ケーブルを分離してください。
(5)エアホース等との混配線
エアホース等の硬いものと一緒に混配線する場合は、必ず仕切板で、エアホースとケーブルを分離してください。
(6)ケーブルベアの破損
ケーブルベアが破損した場合は、ケーブルも交換してください。過剰なストレスにより、ケーブルがダメージを
受けている可能性があります。
※ケーブルベアは、株式会社椿本チエインの登録商標です。
その他の注意事項
断線事故につながるため、次のような敷設はしないでください。
(1)結束部でケーブルをきつく曲げないでください。
(2) ケーブル長さに注意し、かつ、曲げ部分の自由度を確保してください。
(3) 曲げ半径を出来るだけ大きくしてください。
(4) コネクタを付ける時は、スリーブ等でサポートしてください。
(5) 曲げ部分で、複数のケーブル(特に外径の異なる)をインシュロックなどで結束しないでください。
ケーブルの各種難燃性試験
電線・ケーブルの主な難燃性試験方法を以下に示します。
電線・ケーブルの難燃性は、使用される環境や適用される規格などにより、適切な設計及び選択をする必要があります。
JIS水平燃焼試験
(1) 適用規格 : JIS C 3005 4.26 難燃 a)水平試験
(2) 試験概要 : 試料を水平に支持し、還元炎の先端を試料の中央部の下側に、30秒以内で燃焼するまで当て、炎を静かに取り去った後、試料の燃焼の程度を調べる。
(3) 判定基準 : 60秒以内で自然に消えること。
主として、ゴム系の電線・ケーブルに適用される試験です。
(4) 試験装置概要(単位mm)
JIS傾斜燃焼試験
(1) 適用規格 : JIS C 3005 4.26 難燃 b)傾斜試験
(2) 試験概要 : 試料を水平に対して約60度傾斜させて支持し、還元炎の先端を試料の下端から約20mmの位置に、30秒以内で燃焼するまで当て、炎を静かに取り去った後、試料の燃焼の程度を調べる
(3) 判定基準 : 60秒以内で自然に消えること。
(4) 試験装置概要(単位mm)
ビニルシースケーブルやエコケーブルなど、自己消火性を有するプラスチック系の電線・ケーブルに適用される試験です。
垂直燃焼試験(UL VW-1 燃焼試験)
(1) 適用規格 : UL1581 1080.VW-1 Flame Test
(2) 試験概要 : 試料を垂直に保持し、20度の角度でバーナの炎をあて15秒着火、15秒休止を5回繰り返し、試料の燃焼の程度を調べる。
- 残炎による燃焼が60秒を超えないこと。
- 表示旗が25%以上焼損しないこと。
- 落下物によって底部の外科用綿が燃焼しないこと。
(4) 試験装置概要(単位mm)
UL規格で規定される試験で、ULケーブルでは、必須の難燃試験です。
一条垂直試験
(1) 適用規格 : IEC 60332-1 (JIS C 3665-1)
(2) 試験概要 : ケーブルを垂直に保持し、45度の角度でバーナの炎をあて、規定の燃焼時間後、バーナを取り除き炎を消し、試料の燃焼の程度を調べる。燃焼はケーブルの外径に応じ下表に示す時間連続して行う。
(3) 判定基準 : 上部支持材の下端と炭化の開始点の距離が50mm以上ならば合格。 更に、燃焼が上部支持材の下端から540mmより下方に広がったときは不合格。
(4) 試験装置概要(単位mm)
国際規格IECで規定された試験で、標準的な難燃ケーブルに適用されます。
垂直トレイ燃焼試験
- IEEE 383
- JIS C 3521
- IEC 60332-3
- UL1581
(2) 試験概要 : ケーブル外径の1/2の間隔で布設幅が150mmとなる本数分を、はしご状の垂直に設置されたトレイに敷設し、トレイの下方から規定のリボンバーナにより、ケーブルを20分間燃焼させる。
(3) 判定基準 : ケーブル上端まで延焼しないこと。
(4) 試験装置概要(単位mm)
米国電気学会(IEEE)で開発された試験方法で、高難燃仕様ケーブルの試験に適用されます。現在では、JIS、IEC、ULなど、多くの機関によって改良が加えられ、規格化されていますが、火源としてのバーナーの形状や火源の熱量は、各規格ともほぼ同様のものとなっています。
ケーブルの使用温度範囲
通信, 計装ケーブルの絶縁体, シース材に使用される主な材料の許容温度を以下に示します。
- 材料単位での標準的な許容温度を示しましたが、 特に最低許容温度は、 配合により大きく変化しますので、 あくまで代表例としました。
- ケーブルとしての使用温度範囲は、その構成材料の内、 温度範囲の低い材料によって決まります。例えば、 ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルの場合は、 ー15℃~60℃となります。
- さらにケーブル布設環境も考慮する必要があり、 固定用と可動部用では、 同一配合であっても使用温度範囲が変わる場合があります。又、 固定用配線の場合でも、 布設後の曲げによる応力や、 側圧などの影密から、 必すしも 材料の許容温度=ケーブルの使用温度にはなりません。
※従って上図は、一般的な材料選択の指針としてください。
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